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Feb 9, 2022

【WEB研修レポート】

要介護高齢者の誤嚥性肺炎を予防する口腔ケアの実践

~正しい頑張り方と頑張らずにできるもう一つの方法~

フリーランス歯科医師 日本老年歯科医学会・摂食機能療法専門歯科医師 岩山和史氏

【WEB研修レポート】

令和4年2月7日 9:30~12:30視聴

歯科衛生士 廣瀬絵里佳

【研修内容】

口腔清掃不良は細菌(悪玉菌)が増えて感染症を引き起こしやすくなる。

口腔感染症(歯周病、虫歯、口腔カンジダ症)と呼吸器感染症(びまん性嚥下性気管支炎、誤嚥性肺炎)これらの予防には「口腔ケア」が重要である。誤嚥性肺炎を繰り返すケースは(間違った方法で実践している、そのことに気づかず、口腔ケアを頑張っている、頑張り続ける事でかえって肺炎リスクを高めている)など頑張り方を間違えている事もあると始めにありました。

 

第1章は口腔ケアの正しい頑張り方

  • 口腔内では善玉菌と悪玉菌が共存しているが、そのバランスが重要である。細菌(悪玉菌)は歯・義歯の表面に存在する(付着型)と唾液中に存在する(浮遊型)があると考えるとよいとありました。

誤嚥性肺炎の原因は唾液の誤嚥が多く、浮遊型の細菌をいかに取り除くかが決め手であり、付着型を歯ブラシで磨き取り除き、浮遊型をスポンジブラシやガーゼで拭う。単に磨くのみでは口の中に汚染をばらまく事になり、これをバランスよく実施する事が大切である。

  • 口腔ケアのテクニックのうち拭うための「3つのテクニック」として
  • 安全姿勢を作る

30度G-UPは安全であるか?→枕調節をしていない頭部後屈状態では危険である。つまり東部の位置が最も重要である。(VE動画と共に学習)介助姿勢も上からでなく、目線を合わせ顎引きになるよう誘導する。

顔が正面を向かない場合(頸部の拘縮が強い、座位保持ができない、治療上の理由でG-UPができない)等困ったときは“側臥位”にする。

  • 唾液を吸い取ろう

吸い取る方法は吸引管、吸引管付きブラシ、スポンジブラシ、ガーゼがある。

唾液の溜まりやすい場所は、顔が正面の時は両側の臼歯部と舌下部であり、右側を磨くときは右下頬側、内側を磨くときは舌下部、左側を磨くときは左下頬側をスポンジで拭い、ガーゼの場合は前述部位に挿入しておくとありました。ガーゼを挿入する場合は端を出しておく事で置き忘れ等の事故防止を必ずする事とありました。側臥位の場合は下側になっている頬側部分にガーゼを挿入する。ガーゼは舌を動かす等ある方は向いていない為、スポンジブラシや指巻きで使用する。

  • 水の代わりにジェルを使おう

水を使うと喉へ流れ落ちる為、水気を切る事が大切であるが、水気が無いと清掃効率が悪くなる。以前は乾燥予防を目的としたジェルであったが、今は歯磨き粉と水の代わりの清掃用具としての物品に変わっている。ジェルの特徴は、清掃効率上昇と垂れにくい、汚れが口内で広がらない、汚れを絡めて拭える等がある。ジェルにも性状や風味、薬効等様々あり、対象毎に返る必要がある。

  • 口腔ケアのリスク管理

のどに落としたかを知る方法

  • 声で判定→声を聴いて湿性嗄声がある。ケアの前後で比較する。
  • 呼吸音で判定→頸部聴診で雑音が無いか確認する。

湿性嗄声や濁った音が聞こえた場合は、咳払いや空嚥下を促す。

ムセた時の対処法

  • その場を離れない
  • ムセを我慢しないよう声掛けをする
  • 背中は叩かない
  • 咳払い+空嚥下でのどをキレイに
  • ゴロ音等があれば吸引を検討する
  • 発熱の可能性を伝える

誤嚥後の対応は側臥位にすることで、重力の力で気道の奥の誤嚥物や痰を移動させる。

  • うがいについて

うがいに必要な機能

・ブクブクうがい→口唇を閉じる、奥舌を挙げる(水をせき止める)頬に息を出し入れする

・ガラガラうがい→上を向いて口を開ける、舌を奥に引く(水をせき止める)のどに隙間を作り、息を吐きだす

両者とも高度な協調運動が必要。

うがい時の工夫(水はすべての物質で最も誤嚥しやすい。水をのどに流さないようにする工夫が必要)

  • 先に介助者が口内を拭う
  • 前傾姿勢を作る
  • ブクブクうがいをする
  • しっかり水を吐き出す
  • 介助者が口に残った水を拭う

(ムセる場合はとろみを付与)

 

第2章は頑張らずにできる口腔ケア

  • 口はなぜ汚れるか?最大の要因は口の機能の障害である。(口をどのように動かしているか、液体、半固形、固形物を条件付きで食べる実習がありました)
  • 口の機能
  • 液体は口唇を閉じ取り込み、口腔内に一旦保持しその後一気に飲み込む
  • 半固形物は食品を取り込み、舌で押しつぶし、舌で食品をまとめ送り込み、飲み込む
  • 固形物の食べ方は食品を取り込み、舌で食品を奥歯の上に乗せ、咀嚼を行い、舌で食品をまとめ送り込み、飲み込む

これらの正しい食べ方重要で、対象者の口の動き食べ方で食べられる食形態が決まる。(動画をみて評価をする学習)(食べ方を確認する実習)

  • 食べられない最大の要因は脳の疾患であり、アルツハイマー型認知症や脳血管障害で食べ方を間違えていたり、忘れてしまっている。
  • 障害がある方の口は疲れ切っている為、訓練はあえて控え、残存機能を引き出す事を優先にする。
  • 食事の分類について、学会分類2021を使用する説明があった。ちなみに薄いトロミ、中間のトロミは飲む動作であり、濃いトロミは半固形物を食べる動作と認識する。(食事調整について動画で評価を学習)

簡単すぎる食形態は、廃用を招き、食べる楽しみの減退、栄養摂取量の低下となる。逆に難しすぎると、口が汚れる、ムセる、丸のみ癖がつく、食事が嫌いになる。食べ方にあった食形態を提供しそれが、良好な運動を引き出し、機能を維持・向上させ口の汚れも軽減する。

丸呑みによるトラブルには嚥下困難感(窒息リスク)消化不良(嘔気嘔吐のリスク)未消化便(腸閉塞のリスク)がある。

  • 食事調整は段階的に変更する事で食事の見た目が一気に変化し、食欲低下を起こさないような配慮をする。
  • 一口大食→刻み食→極刻み→ソフト食と変更
  • 1品ずつソフト食へ変更
  • 1食ずつソフト食へ変更

等のようにする。本人に相談してどの方法が良いか聞くのも良い。

  • 歯の着色などは内服薬の影響が多い。飲み合わせ、飲み方、等知っておく必要がある。また、口腔内に残留していると薬剤効果が減少している事もあり、体調不良にもかかわってくる。(動画で症例検討)

 

第3章お悩み解決困難事例

  • 拒否のあるケース

間違った接し方→パーソナルスペースを意識する。難しい表現や長文、疑問文を避けて会話する。

警戒心を解く→リラックスしている食後すぐに口腔ケアをする。聴診器を活用する。

口の痛み→原因を探し早期に対処する。ハチアズレ等のうがい薬を使用する方法もある。過敏の可能性もあり、脱感作や健側から触り磨く、奥歯から触り磨く、なんもうブラシを使用、優しいタッチング等で対応する。

  • 開口が難しいケース

不随意運動等脳の疾患が原因で原始反射生じる事がある。これらを逆に利用してケアをしていく。

どうしても開口が難しい場合は、一度立ち止まり磨く、拭うのバランスを考え、どこまでできるかを考える。

  • 唾液が多いケース

なぜ唾液が多くなるのかは嚥下障害(唾液嚥下の頻度低下)を基に不良姿勢、胃食道逆流、薬剤の副作用等がある。不良姿勢について画像を用い学習。

  • 口腔乾燥について

カンジダ症や剥離上皮の除去の方法の説明があり、保湿プランを立てると負担なくできるとのこと。

 

【今後どう活かすか】

今までに他の研修で学んだ事も踏まえ、優悠邑にとって何が必要かを考え、介護職員へ分かりやすく説明する事が大切であると改めて感じました。職種により考え方、見方が異なり、何をどうすれば良いか明確に、また、使用する物品も分かりやすくすることで職員間の差異もなくさなくてはと思いました。

よってまず、口腔ケアの統一の為に職員がどのようにケアをしているかを実際に見て把握していきます。次に入居者ごとのケア方法を分かり易く示し統一していきます。そして職員全員が入居者ごとに統一したケアができるように説明と指導をしていきます。

これからは、食事観察や口腔ケアをして思ったこと、感じたこと、客観的観察での評価等をどの職員でも共有できるツールを作成して問題と解決策を各職種の専門性を持ち寄り多方面から考えていけるようにしていきたいです。

全てのケアに通ずる事ですが、職員個々の差が大きくあり、統一したケアを再構築する事を第一に行い、その中に、本日学んだ事を取り入れ情報発信していきます。

入居者にとって良き人生を全うして頂けるような温かいケアを一つずつ行っていきます。