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Mar 23, 2016

岐阜県嚥下障害研究会・朝日大学附属病院摂食嚥下障害研究会 共催研修会のレポート

廣瀬歯科衛生が朝日大学にて行われた「岐阜県嚥下障害研究会・朝日大学附属病院摂食嚥下障害研究会」に出席しましたので以下にレポートを掲載します。

内容:発表3題

①「肺炎予防の取り組みについて」

特養 ほほえみ福寿の家 歯科衛生士

②「脳幹梗塞後の重度嚥下障害から3食経口摂取に至った1例」

木沢記念病院 言語聴覚士

③「ST訓練時に予想される急変時の対応~ロールプレイを通して学んだ嘔吐、窒息、心肺停止」

東名古屋病院 言語聴覚士

 

講演

「障害者の摂食嚥下リハビリテーション~小児期、成人期、高齢期 生涯にわたる支援を目指して~」

向井美惠先生  (朝日大学客員教授、昭和大学名誉教)

 

 

上記内容で研修に参加させて頂きました。特に日常業務に関連の深い①と講演について報告します。

 

肺炎予防の取り組みについてでは、「施設の取り組みの紹介」「H26年度の状況」「口腔ケアの指導、実践内容」「症例」という流れの発表でした。

取り組みについては、5つのゼロと4つの自立支援で、歯科衛生士はアセスメントにより高リスクの方に介入しているという状況でした。

H26年度の状況で入院患者の内訳で肺炎は30%を占めている事と、5月と3月に多く肺炎入院があることが示されていました。肺炎発症者はBMI18.5以下が53%、過去に肺炎既往がある者が70%、食事摂取は一部もしくは全介助が60%、改訂水飲みテストで嚥下障害がみられる者が75%などで、口腔ケアについては全介助が多く、衛生状態の良好と不潔は同数であった。また水分量も比較的少なくアルブミン値も3.5以下となっていました。

口腔ケアの指導、実践内容では、口腔ケア物品の管理方法や口腔ケアの方法。ケア後の口腔内の汚水の処理法等を実施しているとの事でした。

症例については動画で食事の様子とミールラウンドでの内容の発表がありました。

最後に症例についての検討会で、食事形態は本人の希望との兼ね合いが大切ということや、刻み食により咽ていた症例であり食塊形成できずバラけて喉頭侵入している為、食感を残しながらまとまる物を準備することが大切であること。また、映像から食事中にキョロキョロしていることが多く、机の配置がみんなの行動が見渡せる場所で注意散漫になっている為、どちらか一方でも壁に面すると良いという意見がありました。

 

 

講演は障害者の摂食嚥下リハビリテーションで食支援についての内容でした。摂食嚥下機能障害への対応の基本として、1.ハビリテーション2.リハビリテーション3.機能維持の3領域があり、それぞれの領域に意識を変えて対応する必要があるということを学びました。高齢者の誤嚥は完全にフレイル(虚弱)であり、摂食嚥下に関する多臓器の減退と考えられ起こることを念頭に置く必要がある。機能低下の流れに沿って味や形態を変え、その上で機能を維持していく事が高齢者の目標であると改めて実感しまた。

 

チーム医療・福祉は多職種連携が不可欠であり、互いに他職種を尊重し、明確な目標に向かう必要がある。チーム医療・福祉の基本と課題では、情報交換は感情や思いの共有が必要で互いの職種内容を知り知識と能力を信頼するコミュニケーションが必要である事。情報の共有化は相互間の人間的(感情的)つながりが必要であり、専門用語の内容の共通理解と認識が不可欠である事。質向上のための教育は専門職としての縦の教育と、他職種を知る横の教育が必要という事である。

 

摂食嚥下に関する考え方については正常、異常で考えるのでなく、発達の過程における定型を知りそのラインに沿っているかで判断する。摂食嚥下リハとはサポートするシステムであり主訴を良く知る事が大切であり、食べること、食べたい思いを支える為に食べる仕組みの基礎を知る事が大切だと学びました。

食べる動きは育てられる事であり、感覚が分かるからこそ運動ができる。五感により食物を認知することが何より大切である。美味しさを構成する3要素に①味覚②嗅覚③食感(触覚)が必要であること。その中の味覚には味物質と唾液が混ざることや舌にある味蕾で味を感じる事であり、食事には口腔ケアや唾液分泌が必要性だと改めて感じました。

また食感や感覚は口唇や前歯といった閾値が小さい部位で感じてもらう必要ある為、口唇で取り込み前歯で噛みとる動作を促す必要があるとわかりました。

美味しいと感じるテクスチャーにはEBMに沿う事が大切であることや、年齢に合った1口量で美味しさと安全を確保することが重要とわかりました。

食物の流れにはほぼ口腔が関与するため、この流れを強固にする事や味覚閾値を高めるためにも口腔ケアは重要である事も話のなかにありました。

 

ハビリテーションとリハビリテーションとの違いは、リハビリは目からの情報で思い出すことができる。そのため、嚥下に問題のある高齢者でも大好きな寿司を見ればいつも以上に頑張り食べることができる。しかし、1つは食べられても3つは無理など見極めが大切になる。という話もありました。

 

その後、解剖、生理学やVFとVE画像で症例紹介と診査方法を学びました。診査にはVEやVFも有効であるが、基本はRSSTや水飲みテスト、頚部聴診であり、食事形態の変更時も頚部聴診をすることが大切といわれました。話の中で口腔にできた空間をいかに補綴するかにより機能維持が高まる事も強調されました。

 

リスク管理について窒息事故の研究もされており、危険因子として①食事の自立②臼歯部咬合が無い③認知機能の低下がある。これらが関連しており、3つ揃うとより危険となる為、これらが当てはまる人は起こらない様に注意をし、且つそれらのリスクを把握しておく事が重要と言われました。

また、窒息時の対応では固形物が喉頭周辺に詰まった状態は背打法やハイムリッヒ法が有効であるが、餅等がベッタリと下咽頭にくっついた場合は上記方法は無効であり、鉗子で除去することしかできない為、迅速に救急車を呼ぶ事が必要と学びました。

 

最後に口腔ケアはチーム医療で活かされる。これからは超職種型チームでそれぞれの職種は互いに意思の疎通を図り、自己の専門領域を超えできることは積極的にカバーし合いながら協業する事が大切であると学びました。

4月から朝日大学包括支援歯科医療センターが誕生する説明があり閉会しました。