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Feb 14, 2016

平成27年度高齢者福祉施設における多職種連携推進研修会 報告書

(平成27年度高齢者福祉施設における多職種連携推進研修会 報告書

食事・栄養管理係長 若園貴宣

 平成28年2月4~5日の2日間にわたり、全国老人福祉施設協議会主催の平成27年度高齢者福祉施設における多職種連携推進研修会に参加しましたので以下報告します。

●2月4日(木)

①全国老人福祉施設協議会 太田副会長より基調報告
介護人材についての現状と、将来に向けた介護人材確保の国の取り組み方針が示され、また今後もインドネシアをはじめとしてフィリピン、ベトナムからの外国人介護職員の受け入れが増えていくことが説明されました。最後に名古屋市で作成された介護の仕事に関する紹介VTRが流され、介護の仕事を魅力的にPRしていくことの必要性を感じました。

②厚生労働省老健局 振興課長 辺見聡氏より行政説明
介護保険の誕生から、見直し、改正を経て現在の介護保険に至るまでの経緯について説明を受けました。今後国としては、一億総活躍社会の実現にむけて地域が主体となることが望ましいとのことで、地域包括ケアシステムを構築し、医療と介護の関係機関の連携を強くしていきたいとのことでした。また高齢者の方がもっと社会参加し、社会的な責任を持つことで、介護予防につなげていきたいとの考え方について説明を受けました。

③元・福島大学教授 飯田史彦 氏による講演「生きがいの創造~今後の老人福祉に求められる、最先端の科学的スピリチュアル・ケアの理論と方法」
心を病む人が多い現代社会において何が救いの手となりうるのか、また宗教に対し距離感を持ちがちな日本人が宗教の力を借りずに、どうすれば明日に希望を持って生きることが出来るのか、その問題の解決にはスピリチュアルケアが有効だと飯田氏は訴えられました。このスピリチュアルケアとは、固定化されたうつ的な思考を科学的な根拠をもった別の価値観や新しい考え方を相手に伝え思考を変容させるものだということです。例えば死後の生まれ変わりを信じることや、すべての行為には意味があり意味のないことは存在しないという宗教にも近い考え方を自分の中で、時に取捨選択し、時に都合よく理解することが、生きる活力を養うことに非常に意味があるということです。確かに人知を超えた何者かに私たちは支え見守られているという思考は、かつて日本人が八百万の神を崇め、畏れていた宗教心そのもので、現代の多くの日本人はそれを忘れてしまっているのだろうと感じました。私も施設での看取りが増え、人の死に直面することが多くなりましたが、飯田氏の言葉で「体からはなれて生きる」という印象的な言葉があり、あらためて命の連続性について深く考えさせられました。

●2月5日(金)

①総論 日本大学 文理学部 心理学科 教授 内藤佳津雄 氏 「地域における施設サービス総合拠点化と各職種に求められる役割」
これからの介護サービスは地域包括ケアが求められるということで、地域包括ケアとは施設サービス、居宅サービスなど様々な介護サービスを連携させ、必要なときに必要なサービスを受けることが出来るように一体化されたものだということです。そのような考え方が出てきた背景には、2025年に団塊の世代が70歳後半になるという問題があります。そこで、施設サービスだけでは家族負担の軽減が十分ではない現状や、介護離職も大きな社会問題になってくるなかで、地域が十分な受け皿としてはたらくような環境を作る必要があるとのことでした。今回の研修テーマにもあるように実際に地域包括ケアを支えている人々には多職種の人々がおり、ケアマネージャー、介護福祉士、看護師、医師、歯科医師、薬剤師やもちろん栄養士もそこに入るべき存在だと思います。在宅で十分な栄養管理が出来ずに、低栄養に陥っている高齢者の方も多くみえる現状もあり、私は現在施設の栄養士ですが、施設サービスにおいてもショートステイ、デイサービスなど居宅サービスを利用される方もみえるので、食事に関する問題など積極的に関わっていきたいと思います。

②分科会「口腔ケア」つがやす歯科医院 院長 栂安秀樹 氏「チームアプローチによる効果的な口腔ケアと食事支援}
2日目の分科会では「口腔ケア」に参加させていただきました。最初に栂安秀樹先生による講演会がありました。栂安先生は歯科医として、通院される患者の方しか診察してこなかった反省から、「認知症の方でもいつまでもおいしく食べれる」「最後の1スプーンまで食事支援しなければならない」「口腔機能の向上が出来る歯医者・歯科衛生士の育成」を目標に掲げてみえるとのことでした。さらに「ミールラウンド」と呼ばれる食事中に、介護士をはじめ、看護師、栄養士、歯科衛生士などと食事に問題がある方を見て多職種間での検討会を行い問題解決を図っているとのことでした。今回、嚥下障害を見つける方法として改訂水飲みテストの実習が行われました。これは①対象者の方の口腔ケアを行い、②ティースプーン(3ml)を下唇にあて、③すする行為があるかどうか、④3回行い、1回でもむせるようであれば嚥下障害を疑うというものでした。またこのティースプーンを下唇にあてた時に口を開けて食べるような行為をするようであれば認知機能を疑うべきとの話もされました。嚥下に関し、とろみのつけ方についても話をされ、とろみは3段階が基本で、中間はポタージュ状であること、とろみ剤を投入し、薄い場合はとろみ剤を追加してはダメで作り直すことを言われました。また、食事姿勢について足の裏がしっかり地面についていること、利き腕の逆の腕が机に乗っていること、ベッド上、リクライニングの車椅子上では、頭は少し前屈が好ましいことをポイントに挙げられました。水分を飲む際の口腔の動きにも着目してほしいとのことで、人が水を飲む際は、①上下の唇は閉じ、②上下の歯も閉じ、③舌が上あごにつく、という流れを踏んで行われるといい、口が開いたままの方がみえたら指を添えて口を閉じてあげると、嚥下もスムーズに行くとのアドバイスもされました。また、嚥下機能が落ちてくると、1回の嚥下ではすべての食塊が食道に落ちることは難しく、顔を横に向けて嚥下して頂いたり(横向き嚥下)、うなずきながら嚥下して頂くこと(うなずき嚥下)も有効だとの話もありました。食事は自立行為の中でも、もっとも基本となる行為なので、食事の自力摂取が可能になれば、他の自立行為(排便、排尿、更衣、歩行)にも良い影響を与えるとのことでした。

③分科会「口腔ケア」

【実践発表1】特別養護老人ホーム若竹苑 歯科衛生士 泓 雅子 氏「多職種で支える総合的な食事支援と口腔ケアの実践」

【実践発表2】特別養護老人ホームアテーナ 介護支援専門員 木内 泉 氏 「口から食べるということ」

今回の研修の最後に、2施設から実践発表がありました。ともに食事の摂取に問題がある方に対し、介護職、看護師、歯科衛生士、栄養士などの多職種が連携することで、問題解決が図られたとの報告でした。その中で注目したのは、傾眠傾向がある方の食事提供に対するアプローチで、①食前に口腔内マッサージを定期的に行う、②外部からの刺激(日光浴、端坐位訓練、食事の匂い)を行うようにしたところ食欲が回復し、傾眠も改善されたとの報告でした。私も栄養士として、今後も積極的にフロアへ食事介助に出向き、直接訴えることが出来ない方の声を聞き、おいしく、安全に食事を食べて頂けるよう働きかけを行っていきます。